半導体覇権 2021 4 11
書名 「スパコン富岳」後の日本
著者 小林 雅一 中公新書ラクレ
日本のスーパーコンピューター「富岳」は、
世界ランキングにおいて2期連続で王座に就いたというニュースがありました。
しかも、2位を大きく離して王座を獲得したという。
このスーパーコンピューターは、
理化学研究所と富士通が共同開発した成果と言えるでしょう。
また、コンピューターの頭脳である超高速プロセッサ「A64FX」も、
理化学研究所と富士通が自主開発したプロセッサであるという。
興味深いのは、米中のスーパーコンピューターが「GPU」を使って、
処理速度の向上を図っているのに対して、
富岳では、A64FXという汎用CPUだけで全体を統一した点でしょう。
さらに、アーキテクチャは、IT業界の主流となった「ARM」になっています。
これが意味することは、プログラミングが楽であるということでしょう。
この本によると、開発者は、
スパコンでもパワーポイントのような身近なアプリが使えるように目指したという。
ここが重要であり、どんなに高速でも使いにくければ、
誰もスーパーコンピューターを利用せず、「宝の持ち腐れ」となります。
世界最高速度を目指しながら、使いやすさも目指す。
つまり、車で言えば、F1マシンでありながら、一般公道も走れるということかもしれません。
日本のライバルである米中が、
世界最高速度を目指しながら、使いやすさも目指すことができるか。
単にスピードだけ求めるのか興味深いものがあります。
さて、この本で気になるのは、
アメリカが次世代のスーパーコンピューターのCPUの何台かを
世界最高の製造技術を持つ台湾のTSMC社に製造委託するという話です。
国際ニュースでは、「台湾有事」が語られます。
(注)
GPUは、CPUと違って、画像処理に特化したプロセッサとして知られていますが、
その特性を利用して、スーパーコンピューターでも使われています。